
山梨大学ワイン科学研究センター(甲府市武田4)で4月、「究極の滴~100年先まで紡ぐ山梨大学ブランデー製造プロジェクト」が始動した。
同プロジェクトは「シン・山梨大学ワインプロジェクト」の第2弾で、山梨県を代表する固有品種「甲州ブドウ」を原料に、世界最高峰とされるコニャック式の伝統的手法でブランデー製造に挑むもの。同センターは1947(昭和22)年の設立以来、78年にわたりワイン科学の研究と技術開発を続けてきた歴史を持つ。これまでの知見と技術を生かし、甲州ブドウの持つフレッシュなかんきつ系の香りや軽やかな酸味など、「品種特性を最大限に引き出す」ブランデー造りを目指す。
甲州ブドウは1000年を超える栽培の歴史を持つが、近年は高齢化や生食用品種への転換により生産量が減少傾向にある。山梨県内の醸造用甲州ブドウの供給量は、2000年以降ピーク時の年間約1万3000トンから3000トン前後にまで減少し、地域経済やワイン産業にも影響が及んでいる。今回のプロジェクトは甲州ブドウの新たな活用法を提案し、地域農業の活性化と地元経済への波及効果も期待される。
同大学では過去にブランデー製造の実習を行っていたが、人員や予算の制約から20年以上にわたり研究や教育が途絶えていた。今回、学生や教職員が一丸となってブランデー造りを復活させ、次世代の技術者育成や日本独自のブランデー文化の確立、先進的な蒸留・熟成技術の研究推進を目指すという。クラウドファンディング(CF)で集めた寄付金は、老朽化した1973(昭和48)年導入のブランデー蒸留器の修理費や熟成用オークだる、たる洗浄機、ボトリング資材などの購入に充てる。
同センターの鈴木俊二さんは「多くの皆さまからの温かい支援により、第1目標300万円を無事達成できた。ネクストゴールでは老朽化した設備の修繕や更新をさらに進め、学生とともに本格的なブランデー製造体制を整えたい。これにより、作業性の効率化、ブランデーの品質向上に加え、学生たちの実践的な学びの場も充実させることができる。日本の酒文化を支える次世代の人材育成と日本発のブランデー文化の確立に向け、引き続き尽力する」と意気込む。
CFは5月30日23時まで。