山梨県立文学館(甲府市貢川1)開館35周年記念特設展「文学はおいしい」が7月13日に始まる。
文学作品や作家たちのエピソードに、印象的な食の場面が登場することに着眼した同展。芥川龍之介が夢中になった甲州ブドウ、スープ皿に映った富士山を詩にした田中冬二、飯田龍太が贈った甲州のヤマメを絵にした井伏鱒二など、文学の中のおいしいシーンを、直筆資料と共に紹介する。
芥川龍之介が、山梨で行われた行軍演習を終えた後、友人の山本喜誉司(きよし)へ宛てた手紙で、演習中の様子を伝えた後に追伸で「甲州葡萄(ぶどう)の食ひあきを致し候 あの濃き紫に白き粉のふける色と甘き甘き汁の滴りとは僕をして大に甲斐を愛せしめ候」と甲州ブドウに魅了された様子を記したものや、田中冬二が河口湖畔の富士ビューホテルで朝の食卓の場面を詠んだ詩など約90点を展示する。
期間中の7月28日には「消しゴムはんこづくりワークショップ」、8月12日には講座「作家が描いた甲州の食あれこれ」を行う。閲覧室では「たべもの百景」と題し、おいしそうな食べ物や料理が登場する文学作品を、図書や雑誌で紹介する。
学芸幹の高室有子さんは「今回の展覧会は、文学作品の中に登場する食べ物、食卓、文学者自身の食べ物に関わるエピソードを直筆資料と紹介するもの。作家それぞれに特徴を持った描写があり、食べる行為での人物の心境など、表現の面白さを読み取ってもらえれば。展示をきっかけに、これまでに読んだ文学作品が思い浮かぶこともあると思う。もう一度本を開く機会にしてもらえれば」と話す。
開館時間は9時~17時、月曜(7月15日、8月12日は開館)、7月16日休館。観覧料は、一般=330円、大学生=220円(高校生以下の児童・生徒、65歳以上、障害者手帳持参の人と、その介護者は無料)。8月25日まで。