特集

【やま偉ヒト_001】須田康裕編集長に聞く
「バス小瀬新聞」創刊から20周年の軌跡

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 「やま偉ヒト(やまいひと)」とは、山梨で活躍するの偉人のこと。
山梨県で地域に愛を持って活動している偉人たちを紹介する特集シリーズです。
地域の発展や人々の生活を豊かにするために尽力する人物にスポットライトを当てていきます。


【やま偉ヒト_001】バス小瀬新聞 編集長 須田康裕さん 

 ヴァンフォーレ甲府(以下VF甲府)ホームゲーム当日に、VF甲府サポーターとアウェーチームサポーターに向けて配布するフリーペーパー「バス小瀬新聞」が、6月5日に創刊20周年を迎えた。須田康裕編集長に、20周年を迎えた「バス小瀬新聞」の軌跡について伺った。

新聞を配布するVF 甲府サポーターの様子

ミッションについて
 「すべてのJリーグファン・サポーターにリスペクトを」。バス小瀬新聞は「もらって嬉しい。また山梨来たいと感じる新聞」を実現するため、「すべてのJリーグファン・サポーターにリスペクトを」というミッションを持ち、VF甲府とアウェーサポーターが喜んでもらえるよう新聞を制作している。

 甲府駅南口バスターミナルからJITリサイクルインクスタジアムまで運行しているシャトルバス乗り場でバス小瀬新聞を配布した試合は20年間で約380試合、配布枚数は約8万部となる。

 創刊当初は、シャトルバスに乗ったサポーターに向けたアンケートの回答や、新聞の趣旨などを記載したA4サイズの新聞だった。現在は、VF甲府とアウェーチームの注目選手を紹介するコラムや試合当日のスケジュール、イベント情報だけでなく、次回アウェー情報といったサポーターが役立つ情報が記載されたA3サイズ両面の新聞に成長した。

2004年6月5日の「バス小瀬新聞」創刊第1号と最新号

おもてなしの新聞になったきっかけについて
 バス小瀬は「バスに乗ってみんなで小瀬に行こう」の略称。シャトルバスに乗るVF甲府サポーターを増やすべく2001年11月18日に創設。みんなでおそろいのVF甲府のユニフォームに身をまとってスタジアムに行った。

 創設から3年後、2004年6月5日にバス小瀬新聞を創刊。はじめは車内レクリエーションで募集したアンケートの答えを新聞にまとめたことから始まり、VF甲府サポーターから寄せられた文章を集めた新聞へと変化していった。

 ところが2009年、バス小瀬新聞の新年会で新聞の感想を伺ったところ「私がアウェイチームサポーターだったらこの新聞は受け取らない。甲府の事しか書いていないから」と指摘を受けた。その指摘をきっかけにアウェイチームを労う記事を掲載するようになると、ホームページやSNSを通じて「歓迎してくれて嬉しい」という投稿がアウェイチームのサポーターから届くようになった。

 これが甲府サポーターだけでなく、アウェイチームサポーターを歓迎する新聞を制作するきっかけとなる出来事だった。読んだ人に喜んでもらえるように、毎年改良を加えつつ進化していき、現在に至る。

1月に行われた「第4回Jリーグサポーターフリーペーパーサミット in甲府」の様子 

20年続けられた理由について
 「喜んでくれる人がいるから」。「新聞を喜んで受け取ってくれる人がいる」ことが、20年続けられた理由。

 毎回楽しみにしてくれて、欠かさずに新聞を受け取ってくれるVF甲府サポーターや、「この新聞をもらうのが楽しみで山梨に来た」というアウェイチームサポーターもいた。

 また、「自分の書いた文章が新聞と言う形で残るのは嬉しい」という、コラム執筆に関わったサポーターの声も力になっている。

「第4回Jリーグサポーターフリーペーパーサミット in甲府」作品展示ブースの様子


意識していることについて
 VF甲府サポーター以外の指摘も柔軟に取り入れる。2018年に異業種が集まる朝会で、バス小瀬新聞についてプレゼンしたところ、飲食店を経営している参加者から「この新聞はVF甲府サポーターが上、アウェーチームサポーターが下という配置になっているけど、おもてなしを推進するのであれば並べて掲載したほうがいい」とアドバイスをもらい、実行した。

 バス小瀬新聞が掲げる「もらって嬉しい」「また山梨に来たい」と合致していれば、サポーター以外の人からの意見も積極的に取り入れている。
 

臨時バスを運行する山梨交通に感謝を伝えるための清掃は15年間続けている。

VF甲府への思いについて
 「VF甲府は勝利だけでなく、生活の一部として、心のよりどころとして、山梨になくてはいけない存在であってほしい。そう思えるようになったのが2001年。チームの存続危機を回避するために『自分ができることは何か』『みんなとできることは何か』について仲間と意見を出し合い、情報を共有しながら行動した。みんなで存続危機を乗り越えた経験が、今の自分を作っている」と須田さんは話す。

課題について
 新聞の印刷費は20年間、須田さんの持ち出しとなっていて、限られた予算の範囲内で行っているので部数を必要以上に増せないのが課題だという。自己完結型のシステムで続けてきたが、将来を考えたらサスティナブルではないので、「10年後の30周年に向けて、みんなで支えあう組織にしていきたい。そのためも新聞制作に参加しやすいよう、『これなら自分にもできそうだ!』というタグを作っていきたい」と語る。

今後の夢について
 バス小瀬新聞を通じてVF甲府だけでなく、山梨県、Jリーグの発展に貢献していきたい。そのためにもバス小瀬新聞は「山梨発Jリーグサポーター最大のプラットフォーム」を目指し、VF甲府サポーター、アウェーチームサポーターがバス小瀬新聞に関わることで山梨に縁を持ちながら楽しむ仕組みを構築していきたいという。

 相手へのリスペクトを大切にし、また山梨来たいと思えるおもてなしを発信していくバス小瀬新聞の根底には、自分ができることでVF甲府だけでなく山梨県、Jリーグの発展に貢献したいという須田編集長の熱い思いが込められている。

 バス小瀬新聞は、創刊20周年記念号を制作しホームページで公開する。また、6月8日開催のVF甲府vsベガルタ仙台戦で、14時から16時まで甲府駅南口バスターミナル2番乗り場でシャトルバスに乗ってスタジアムに行くサポーターに向けて、バス小瀬新聞甲府仙台号を配布する。

編集後記

 山梨県の地域に愛を持って活動する人物を紹介するシリーズの第1弾は、2024年6月5日に創刊20周年を迎えたバス小瀬(バス小瀬新聞)の須田康裕編集長の取り組みを紹介しました。

 このシリーズでは、偉人たちの日々の奮闘の様子を知って頂き、人々の温かさを感じていただければと思います。微笑ましい一面や、知られざる偉業も紹介していきたいと思っています。

▽バス小瀬新聞

バス小瀬新聞編集部 公式ホームページ(note)

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▽甲府経済新聞のバス小瀬関連の過去記事

Jリーグサポーターが甲府で交流 フリーペーパー文化を発信

甲府で「Jリーグサポーターフリーペーパーサミット」 サポーター交流も

VFサポーター 「臨時バス乗り場」清掃で感謝の気持ち伝える


ヴァンフォーレ甲府公式チャンネル Ventforet Kofu Official より
20191106 ヴァンフォーレイレブン「バス小瀬&フクコセ」

協力=バス小瀬新聞・須田康裕編集長
写真提供=バス小瀬新聞

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