新刊書店「UNCAGE BOOKS(アンケージ・ブックス)」(甲府市朝日)が朝日通り商店街にオープンして、11月3日で1カ月がたつ。
店主の高橋みずきさんは神奈川県相模原市出身。家族で2022年に甲府へ移住した。移住後も東京の会社に勤め、週末には自宅の軒先で日曜日だけのコーヒースタンドを営んできた。
高橋さんは子どもの頃サッカーに打ち込み、「文学少女ではなかった」という。本を読むようになったのは20代後半から。仕事も私生活もうまくいかず疲れ切っていた時期に、本を通して自分とは違う考え方に触れ、「救われた」と振り返る。それ以来、毎週図書館に通うほど本を読むようになった。「引退したら図書館の司書になろうか」「いつか本屋をやりたい」と漠然と思い描いていたという。
開業のきっかけは今年3月。東京へ向かう特急あずさの車中から、自宅を設計した建築家の稲山貴則さんに「いつか本屋さんをやりたい」とメッセージを送った。すると稲山さんから、事務所を1階から2階へ移すので空いた1階で店をやってほしい、という返事が届いた。ちょうど商店街の集まりで「本屋があったらいい」と話題になっていたところだったという。高橋さんはその場で引き受け、会社を退職して準備を進めた。
店には約500冊をそろえてスタートし、現在は約600冊まで増えている。レシピ本から文芸書まで、ジャンルにとらわれず高橋さんが選んだ本を、テーマごとに並べる。チラシや手書きPOPはあえて置かない。表紙のデザインや言葉と向き合い、来店者が自分で本を選べるようにするためだという。
店名の「アンケージ」には「おりから出る」「解き放つ」という意味を込めた。もともとは夫婦で進めてきた移住プロジェクトの名前で、コーヒースタンドにも同じ名を付けた。「本を買ってくれた人が少し解放されて、前を向いて動けるようになるといい」と高橋さんは話す。
営業日の9時~10時には「朝の読書室」を開く。来店者は持参した本や店の本を自由に読み、高橋さんもパソコンやスマートフォンから離れて一緒に読書する。席代は100円で、店内の貯金箱に入れて支払う。「貯金箱がいっぱいになったら、それがみんなの読んだ時間になる」という。
高橋さんは「本は買ってほしいけれど、買わなくてもいいと思っている。本を売るというより、本を選ぶ時間を楽しんでもらえたら。気軽な気持ちで来て、座っているだけでもいい。『今日はこの一冊を連れて帰ろう』と思える出合いがあれば」と話す。
営業時間は9時~17時。日曜・月曜・木曜定休。