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【やま偉ヒト_003】山梨県立博物館学芸員 海老沼真治さん 過去を見つめ、未来を創る。「地域に貢献する博物館」をめざす

「やま偉ヒト(やまいひと)」とは、山梨で活躍する偉人のこと。 山梨県で地域に愛を持って活動している偉人たちを紹介する特集シリーズです。 地域の発展や人々の生活を豊かにするために尽力する人物にスポットライトを当てていきます。

 

【やま偉ヒト_003】山梨県立博物館学芸員 海老沼真治さん

 山梨県立博物館で7月18日から開催されている企画展「『ゆるキャン△』と山梨▲」。来館者が2万人を超え(8月21日時点)、県内外から多くのファンや観光客が訪れている。企画を担当する学芸員の海老沼さんにお話をうかがった。会期は9月7日まで。

 「ゆるキャン△」は、あfろさんによる漫画作品(芳文社「COMIC FUZ」連載)。2015年の連載開始から2025年に10周年を迎え、テレビアニメは2018年の第1作目を皮切りに2021年シーズン2、2024年シーズン3と展開し、2027年にはシーズン4の放送も予定されている。山梨県内の実在する地名や風景を丹念に描いていることで知られ、多くのファンが当地を訪ねる「モデル地めぐり」を生み出してきた。

―「ゆるキャン△」の世界観に、山梨の歴史や文化を重ねた厚みのある展示。見応えがありますね。

もともと「ゆるキャン△」が好きで、山梨を舞台に実在の場所をていねいに描いていることに関心を持っていました。そこに、県立博物館の収蔵している豊富な資料を合わせて、より深く山梨の魅力を表現することができるのではないかと考えて企画しました。

―「歴史」に興味を持ったきっかけは?

歴史に興味を持ったきっかけはゲーム。日本の戦国時代をテーマにしたゲーム(「信長の野望」)に小学校高学年で出会い熱中しました。天下統一も成し遂げました(笑)。好きが高じて大学は史学科へ。専攻は日本中世史。大学院を修了したのち、学芸員として山梨県立博物館に就職しました。 山梨の武将ということもあり、以降武田氏研究を専門としています。

歴史を学ぶということ
―日頃の研究で、過去の出来事の解像度が上がるような「ピース」が見つかることもあるのでしょうか?

歴史学は「検証を続ける」学問です。例えば源頼朝や武田信玄の肖像とされていたものが、別人を描いたものだという見方も出て議論になっています。また、鎌倉時代が始まったのは1192年とされていましたが、最新の研究でもっと早いとされ、教科書の内容も変化しています。 でも歴史を塗り替えるようなダイナミックな新発見はそう頻繁にはなく、特に武田家の場合は非常にまれで、「こんなものが出てきた」と言われて調査してみると十中八九は江戸時代以降のもの。出会いは少ないですが、その分戦国時代の実物にぶつかった時はびっくりします(笑)。


―「歴史を学ぶ」ことは、過去を見ることですよね。それはどういう意義があることですか?

例えば戦国大名を「親会社」とし、家臣や、独立性はあるけれど親会社に従っている「子会社(武田の場合は国衆など)」の経営構造と重ね合わせることもできます。 日本と諸外国との安全保障のあり方として捉えたり。 大局的に見ると、現代と大きく変わっていない、重なる部分がある。 「過去を知る」ことだけで満足していたら、それは趣味で終わってしまいます。 過去を見て明らかにしたことが、「これからどう生かされるか」を意識する必要があると考えています。

博物館の役割と今後のあり方
―政府が国立の博物館や美術館に対し、収入の数値目標を設定しました。

本来、博物館は図書館と同じようにすべての人が「知る」ためのものを備えた場所なのです。 そしてそもそも公立や国立の博物館は、県民や国民の財産である「文化財」を預かって、「お預かりしているもの」を公開している立場ですから、稼ぐという考え方ではないのです。 県立博物館の観覧料も、維持運営のための最低限の費用を負担していただいている、というのが現状です。 ただ国立の博物館を対象とする今回の「稼げ」という方針により、今後我々公立博物館に対しても影響が及ぶ可能性はあります。だからこそ、「本来何のために存在するのか」ということを見つめ直さないとなりません。

―私は博物館に行き、興味を持った他の場所にも出かけています。自分の生まれ育った場所を知ることはとても面白いです。

その視点は非常に大切です。博物館が展示を行うことで、見た人が他の展示施設を訪れ、そこで人との繋がりやお金の動きが発生したりします。「博物館が来館者から直接もらうお金を増やす」狭い見方になってしまっていますが、博物館は「間接的な地域への貢献(経済効果など)」を作り出せる施設なのです。広く地域に貢献していることを、目にみえる形で発信していくことが求められています。

―商業施設のように「その場所で消費して終わり」ではないのですね。

はい。それに私たちの公立博物館の場合、公的な資金も運営資源になっています。だから来てくれた人だけでなくまだ来館していないすべての県民・国民のための活動をしなければいけない。そういう意識を強く持たなければならないと考えています。

やりがいとビジョン
―「やっていて良かったな」と思う瞬間はどんなときですか?

自分で作った企画展に、たくさんのお客さんが来てくれるのが一番嬉しいですね。あとはやはり、調査の中で「こんなものが出てくるとは思わなかった」という新しい本物、発見との出会い、チャンスをいただけるのはありがたいことです。 展覧会を見た方から「感動した」とお手紙やメールをいただくことがあり、そういった反響はとても励みになります。 今は「ゆるキャン△」の展示をやって満足してしまいましたが(笑)、武将やいわゆる歴史上の人物ではない「一般の人」や、歴史にほとんど名前が残っていない、女性たちに光を当てる展示などにも、いつか取り組むことができたらいいなと考えています。

【編集後記】
山梨県の地域に愛を持って活動する人物を紹介するシリーズの第3弾は、山梨県立博物館学芸員の海老沼真治さんの取り組みを紹介しました。 
毎日利用したJR身延線の波高島駅や、母校・旧下部中学校(本栖高校)が登場する「ゆるキャン△」に親近感を持ち、知らなかった山梨の魅力に数多く出会ってきました。
「『ゆるキャン△』と山梨▲」へ足を運んだところ、豊富な史料と世界観の広さに圧倒され、3回も観に行ってしまうほど魅了されました(年パスでよかった)。企画を担当された海老沼さんにお話を聞きたいと申し込んだところ、多忙な中快諾してくださいました。ご協力に心から感謝いたします。今後の展示も楽しみにしております。
「やま偉ヒト」のシリーズでは、偉人たちの日々の奮闘の様子を知って頂き、人々の温かさを感じていただければと思います。微笑ましい一面や、知られざる偉業も紹介していきたいと思っています

【執筆者プロフィール】
高野彩子(たかの・さいこ)/株式会社彩々堂 代表
山梨県身延町(旧下部町)出身。
高野彩子氏は、株式会社彩々堂代表取締役、コミュニケーションプランナー。山梨県身延町出身。京都の広告宣伝会社で18年間、生活協同組合の広報・販促に携わり、紙媒体、Web、SNS、動画の企画制作や、全国各地の産地取材を担当した。2022年に山梨へ帰郷し、認定NPO法人フードバンク山梨で食料支援と広報を担当。寄付募集、SNS運用、動画、クラウドファンディング、プレスリリース、メディア対応などを展開した。2026年に株式会社彩々堂を設立。対話と取材を通じて人・企業・地域の本質的価値を言語化し、広報、PR、販促、ブランディング、組織内コミュニケーションを一貫して支援している。

 

▽企画展詳細

山梨県立博物館 夏期企画展「『ゆるキャン△』と山梨▲」
作中に登場する山梨県内の名所を、キャンプの歴史、身延・南巨摩地域の温泉と観光の歴史、御坂地域の地形など5つのテーマ別コーナーで紹介し、博物館ならではの一次資料や歴史的な解説を通して、作品の舞台裏にある山梨の姿を掘り下げる。

会場:山梨県立博物館(笛吹市御坂町成田1501-1)
開館時間:9時から17時(入館は16時30分まで)
休館日:毎週火曜日(8月11日は開館)
観覧料:一般1,000円、大学生500円(高校生以下、山梨県内在住の65歳以上、障害者手帳を持つ人とその介護者は無料)

山梨県立博物館「『ゆるキャン△』と山梨▲」公式ページ

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