甲府市塚原町のブドウ畑跡地で9月12日、一般社団法人「SOCIAL TEMPLE」(昭和町)が地域参加型の植樹イベント「えん樹(えんぎ)むすび 植樹会@甲府」を開いた。
「えん樹むすび 植樹会」監修の国際生態学センター主幹研究員の目黒伸一さん
昨年10月に続き2回目の開催。前回は同じ塚原町のブドウ畑跡地で、約50人が21種類約660本の苗木を植えた。同団体は2018(平成30)年、県内の伝統仏教寺院の住職らを中心に設立。子ども食堂「寺GO飯」や高齢者向けの終活支援「ゆくすえサポート」、超宗派の僧侶団体「坊主道」、仏教や寺の情報を発信するウェブメディア「お寺のじかん」の運営などに取り組んでいる。
「全てのものはつながりの中で生まれ、互いに支え合っている」という仏教の「縁起」の考え方を元に、植樹体験を通じて自然と人、人と人との「縁」を育むことを目的とする同イベント。県内では鹿の食害や低地の常緑広葉樹林の減少などで森林の機能低下が課題となっているほか、ブドウ畑跡地などの耕作放棄地の増加に伴い、外来種の繁殖や土砂災害のリスクも高まっている。会場はかつてブドウが栽培されていた畑で、同団体は植樹を通じて土地を本来の森の姿に戻す取り組みを進める。
植樹には、その土地本来の植生(潜在自然植生)を見極め、主役となる樹種を中心に多くの種類の苗木を混ぜて密に植える「宮脇方式」を採用。植物生態学者の宮脇昭さんが提唱した手法で、災害に強く、多様な生き物が循環する森の創生を目指す。
当日は、同方式を国内外で実践し、同イベントを監修する公益財団法人「地球環境戦略研究機関」国際生態学センター主幹研究員の目黒伸一さんがレクチャーを行い、参加者は熱心に耳を傾けていた。植える樹種も、目黒さんの監修を基に選んだ。
レクチャーの後、参加者約50人がシラカシ、ヤブツバキ、ヒイラギ、ヒサカキなど20種類600本の苗木を植えた。参加者のうち子どもは15人ほど。普段は土に触れる機会が少ない参加者も苗木とスコップを手に作業を進め、親子で植樹するだけでなく、ほかの大人と交流する様子も見られた。
参加者の女性は「知人からの誘いで、最近自然に触れていなかったこともあり参加した。最初は環境に良いことをする程度の認識だったが、目黒先生から木を植える理由や適した樹種、植え方を教わり興味が湧いた。盆地の甲府では山があるのが当たり前だと思っていたが、人の手を入れることも必要だと分かり、山や森の見方が変わった」と振り返る。
プロジェクトリーダーの松永良樹さんは「昨年の参加者が知人を誘って参加してくれ、子どもたちの『また来たい』という声もうれしかった。共通の知人がいると分かり会話が弾む人もいて、木を植える体験が人と人との縁を育むきっかけになったと感じる。身近な場所で木を植え育てることを通じ、『今だけ、自分だけ』にとどまらず、社会や未来に思いを寄せる営みとして地域に根付かせられれば」と期待を込める。
同団体は今後、植樹した場所を毎週見回り、獣害などの被害がないかを確認する。活動成果の発信を進めるとともに、同じ場所で植樹範囲を広げ、県内のほかの地域での開催も模索する。